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落ち込んでいる時に支えてくれた本
自分とは全く違う世界にいる人たちが、自分が生きているのとは違う場所や時代のことを描いているにも関わらず、
元気づけられてしまう、不思議さ。
遊覧日記(ちくま文庫)武田百合子著
武田百合子さんは、小説家武田泰淳さんの妻です。
遊覧日記は、武田百合子さんが出かけて行った先々での出来事をつづったエッセーです。
武田百合子さんのエッセーは、百合子さんが五感で心で感じたことが、そのまま描写されています。
遊覧日記もそんなエッセーの一つです。
淡々とした小旅行記で、前向きな言葉や励ましの言葉が出てくるわけでもありません。
でも、私は疲れている時、落ち込んでいる時、遊覧日記を読むと、ホッとします。
武田百合子さんの文章は、これは正しい、これは正しくない、と善悪で物事を裁いたりせず、
ただ感じたものをそのまま書いています。
無意識のうちに、私はそういう作者の視点を感じ取って、読むと気持ちが安らぐのかもしれません。
この本を読むと、森羅万象、あらゆるものは、ただ存在しているだけで、そこに善悪はないんだなと感じるんです。
出かけた先々のことをつづったエッセーなのに、なぜこれを読むと、そんなことを感じるのか、
自分でも不思議です。
読んでいると、自分がその当時のその場所にいるような気分になります。
目次
浅草花屋敷
浅草蚤の市
浅草観音温泉
青山
代々木公園
隅田川
上野東照宮
藪塚ヘビセンター
上野不忍池
富士山麓残暑
京都
世田谷忘年会
京都
あの頃
日日雑記(中央公論社)武田百合子著
こちらも武田百合子さんの日記です。
献辞が「いなくなった人たちに」です。すでに亡くなっている旦那さんの武田泰淳さんを思っているのかなあ。
武田百合子さんの遺作となりました。
淡々と百合子さんの日常がつづってあります。
なんでかなあ、疲れている時、日日雑記の文章が心に染みてきます。
自分の毎日も、こういう風に、どんな価値判断もせずに、ありのままを淡々と受け止められたらいいのになあと思う。
風と共に去りぬ(新潮文庫)マーガレット・ミッチェル
映画にもなったアメリカの女流作家マーガレット・ミッチェルの本です。
主人公のスカーレット・オハラは、自分の欲望に率直な女性です。
スカーレットは、周囲からの非難をものともせず、自分が欲しいものを手に入れるために、まっすぐに進んでいきます。
いわゆる「わがまま」な人です。
でも、そこに感動するんです。
私は「他人に迷惑をかけてはいけません」という日本社会の教育のもとで育ったのに、
他人に迷惑をかけようがおかまいなしに、自分の好きなように振る舞うスカーレットに元気づけられる。
不思議なことです。
気持ちが落ちている時に読むと、「負けるもんか、どんなことがあっても、私は生きていく。」という心持になります。
また「風と共に去りぬ」は、登場人物全員の個性がはっきりと確立されています。
そこも大きな魅力です。
あっという間に物語に吸い込まれていきます。
読み終わると、毎回、放心します。