遅咲きのノヴァーリスが咲いた。

ノヴァーリスは品のある色合いだと思う。
ツボミもある。

近づくと、ほのかに香りがする。
香りも素敵。

バラの背景に別のバラがあると、嬉しくなる。

一日中、庭でぼんやりしていたい。
でも、実際に庭に出ると、雑草を抜いたり、咲き終わった花を摘んだり、落ちた花びらを拾ったり、じっとしていたれない。
挿し木のイングリッドバーグマンも咲いた。
イングリッドバーグマンは樹勢が強い。

挿木のイングリッドバーグマンは、咲くまではどのバラの挿し木なのか、わからなかった。
挿木の蕾がひらき、ベルベットのような赤い花を見たら、すぐにイングリッドバーグマンだとわかった。
大昔、女優の桃井かおりさんのエッセイに、ずっとバラの世話をしていたい、という主旨のことが書いてあって、
「かおりさんは、なんて優雅でのんびりした人なんだろう。
人生はやることがたくさんあって、バラの世話だけしていることなんでできないのに。」と思った。
今は自分も同じ気持ちだ。
バラの世話ばかりしているなんてできないのは知っているけれど、人生をバラのように美しいもので埋め尽くしたい気持ち。
今はもう老人になってしまった父親が、バラの咲いている時期は1日中、窓から庭のバラを眺めている。
庭のバラは、父親の部屋の窓から眺めるのが一番美しいのだ。
そうなるように、庭をつくった。
私は、もうずっと父親の娘だけど、父親があんなにバラが好きだなんて、庭にバラを植えるまでは知らなかった。
父親は、こんなに美しい花が、自分の庭に咲くのが、幸せなんだと。
本当は、建て替える前の家にも、昔住んでいた別の家にも、バラはひっそりと植わってはいたのだ。
でも、その時代は、父親はバラをゆっくりと眺めることはできなかったのだと思う。
人生が大変で。