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『お探し物は図書室まで』(青山美智子)あらすじや登場人物!!ほっこり!!

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『お探し物は図書室まで』(青山美智子)あらすじや登場人物!!ほっこり


『お探し物は図書室まで』(青山美智子)の構成

人生に迷っている5人の主人公が、図書室で司書さんのお勧めの本に出会い、また前を向いて歩きだしていく小説です。

主人公ごとに章が分かれていて、全部で5つあります。

1章 朋香 二十一歳 婦人服販売員
2章 諒 三十五歳 家具メーカー経理部
3章 夏美 四十歳 元雑誌編集者
4章 浩弥 三十歳 ニート
5章 正雄 六十五歳  定年退職

私は、電車を乗換駅の品川駅の本屋さんで出会いました。

スマートフォンの充電が切れそうだったので、電車移動の暇つぶしをする本が欲しかったのです。

紙の本を買うのなんて久しぶりです。

本屋さんのお勧めとポップが書いてあったので、じゃあ期待できそうだと思って、買いました。

これが大当たり。本に夢中になっていたので、電車の時間があっという間に過ぎました。

『第一章 朋香』の登場人物、あらすじ、感想

本の付録:フライパンの羊毛フェルト
借りた本:ぐりとぐら


短い小説にも、これだけの登場人物がいる。感慨深い。

藤木 朋香 総合スーパー・エデンの衣装品売り場で販売員をしている21歳
短大進学を機に上京し、エデンに就職してから半年
毎日に退屈さを感じている
沙耶 朋香の地元の友達
実家の金物屋を手伝っている
医者の彼氏ができた
上京している朋香にあこがれを感じている
沼内 朋香の働く衣料品売り場のパート店員
勤続12年のベテラン
パートさんの中でもリーダー的な存在
桐山 総合スーパー・エデンのZAZというメーカーの眼鏡売り場で働く男性
25歳 朋香が唯一、職場でフランクに話ができる存在
上島 朋香の働く衣装品売り場のチーフ。35歳。やる気はなさそう。
権野先生 朋香のパソコン教室の先生
森永のぞみ 図書館の司書の見習い
小町さゆり 図書館の司書
羊毛フェルトが趣味

第一章 朋香のあらすじ

主人公の朋香は、短大を機に上京し、卒業後は総合スーパー・エデンで衣服売り場の販売員をしている。
地元の友人・沙耶には、「東京のアパレル系でバリバリと働く女性」と憧れの目で見られている。
しかし、実際の朋香は、東京で何かやりたいことがあるわけではなく、田舎に戻りたくないという気持ちだけでエデンで働いている。友人の沙耶がイメージしている自分像と実際の自分の落差に、朋香は後ろめたさを感じている。

それだけではない。朋香は、エデンで働く日日に退屈さと閉塞感を感じている。
漠然と、店舗勤務ではなく、オフィス勤務をしたいという希望もある。
このままエデンで働き続けても、本社に戻ってオフィス勤務ができるとは限らない。転職が頭によぎることもある。
しかし、転職するにも、朋香はオフィス経験がない。
転職をするなら、エクセルくらいは使えた方がいいだろう、と朋香は羽鳥コミュニティハウスのパソコン教室に通い出す。

羽鳥コミュニティハウスの中には図書室があった。
朋香は、図書室の司書・小野さゆりに『ぐりとぐら』を勧められ、また、本の付録だと言って、小野さんからフライパンの羊毛フェルトをもらった。

朋香は、『ぐりとぐら』に着想を得て、自宅でカステラを作り出すようになる。

ある日、朋香の婦人服売り場に、服が縮んだ、と怒鳴り込んできた女性客が来た。朋香が数日前に、その女性客にお勧めした服だ。

朋香がどう対応してよいかわからずにいると、ベテランのパート店員の沼内さんが、うまくその場をとりなし、クレーマー客をなだめるばかりか、客は上機嫌にして帰宅させた。

その事件があり、朋香は、「エデンの婦人服販売員の仕事がたいした仕事ではない」と考えていたのは自分の驕りで、本当は素晴らしい仕事なのだと気づく。

職場では、エデンの眼鏡売り場で働く桐山君と距離を縮めている。

桐山くんは、前の職場が激務で、食事をする時間もなく、徹夜も多く、人間らしい生活ができていなかったと休憩時間に話していた。
今のエデンの職場では、桐山くんはお弁当を自炊するくらい、ちゃんと食べて、ちゃんと寝る、人間的な生活をしている。

朋香は自分の生活を振り返り、自分がコンビニやカップ麺ばかり食べていて、寝不足で、部屋の掃除も行き届いておらず、自分もまた人間らしい生活ができていないことに気づく。

朋香は、自分を粗末に扱っていたことを反省し、カステラづくりを皮切りに、自炊をするようになる。

すると、心も体も、晴れやかになっていく。

朋香の心の中から、閉塞感や焦りが消え、背伸びせず、いま自分にできることをしていけばいいんだと思えるようになる。

感想

私は、総合スーパーで婦人服の販売員をしている主人公の朋香とは、年齢も職業も何もかも違う。

しかし、このままでいいのかなと焦る気持ちには、ものすごく共感ができた。ただ、なんとなく今の職場で働いていて、不幸ではないけれど幸福でもない、退屈。なんだか先も見えているような気がする。

「このままでいいのかな。何かを変えた方がいいような漠然とした焦りがあるけど、じゃあ具体的に何をしたらいいのか、わからない。」とモヤモヤした気持ちを抱えている人は、たくさんいるのではないだろうか。

日々の生活の基本的なところが疎かになっているところも、主人公の朋香と私とでは、似ていた。

起床時間がバラバラだったり、栄養のあるものをきちんと食べていなかったり、運動不足だったり、いつも胃の調子が悪かったり。

人間の基本的なこと。

健康的な生活をすること。

規則正しい生活をすること、十分な睡眠をとること、栄養のある食事をとること、運動すること。

こういうのが人生の基礎で、基礎を大切にしていれば、幸せに前を向いて生きられるのかなあなんて思った。

主人公が前を向いて歩き始めると、なんだか自分も前を向けるような心持になる。

朋香は、大きなことではないにせよ、パソコン教室に通ってみたり、図書館で借りた本にインスピレーションを得て、カステラづくりや自炊をはじめたり、とにかく行動した。

小さなことでいいから、自分から動き出すことが大事なんだなあ。そうしたら、流れが変わっていくんだなあ。

あと、自分の仕事がつまらない仕事だと思っていたけど、途中で素晴らしい仕事なんだと気づいたところに、感動した。「誰でもできる仕事」というと、軽視されがちな面がある。どんな仕事でもまごころを込めて一生懸命にやれば、少なくとも、自分や自分にかかわった人にとっては、尊い仕事になるんだなあ。

難しくて、少数の人しかできないような仕事なんかは偉業と呼ばれて、尊ばれる。その反面、多くの人がやろうと思えばできてしまう仕事は、単純作業などと呼ばれて、少し下に見られがちだ。

でも、仕事というのは、難易度や動くお金の規模や知名度なんかだけが物差しではないのではないかなあ、とも思う。人間よりも、もっと大いなる存在なんかは、仕事にどれだけ美しい気持ちがこめられているかを大切にしているのではないかなあ。

『第二章 諒』の登場人物

本の付録:キジトラ猫の羊毛フェルト
借りた本:英国王立園芸協会とたのしむ 植物の不思議


浦瀬 諒 家具メーカーの経理部で働いている
アンティークショップを持つのが夢
比奈 諒の恋人。諒より10歳年下。ハンドメイド・デザイナー
海老川 アンティークショップ煙木屋の店主だった
主人公・諒が、高校生時代に煙木屋に通っていた
いつもニット帽をかぶっている
田淵 諒の働く経理部の部長
吉高 諒の働く経理部の後輩。社長の姪っ子。
那須田 煙木屋の常連だった人
不動産屋の一人息子。自称、道楽息子。
安原 キャッツ・ナウ・ブックスの店主
美澄 安原さんの妻
森永のぞみ 図書館の司書の見習い
小町さゆり 図書館の司書
羊毛フェルトが趣味
美澄さんの図書館の元同僚

第2章 諒のあらすじ

諒は、家具メーカーの経理部で働く会社員だ。
諒は、高校生時代に煙木屋というアンティークショップに通い詰めた経験があり、自らもアンティークショップを持ちたいと、心ひそかに願っている。
しかし、現実的なことを考えると、家具メーカーを辞めてアンティークショップを経営する、という選択肢には一歩踏み出せずにいる。
貯金だって少ない。
10歳年下の恋人・比奈との将来を考えても、収入が不安定な職に就くのは良くないように思う。
日常に流されて、アンティークショップの開店に向けた行動をとれずに、もやもやとした日々を過ごしている。

ある日、恋人の比奈に誘われ、羽鳥コミュニティセンターで開催されていた『鉱物とあそぶ』という講習会に参加する。
帰りに、羽鳥コミュニティセンター内にある図書館で、司書の小野さゆりさんに『植物のふしぎ』という本を勧められ、借りて帰った。
小野さんから、キジトラ猫の羊毛フェルトも、本の付録だと言われ、もらう。

諒は、『植物のふしぎ』を読んでいて、植物は、地上の花や実と、地下の根が、それぞれの世界で役割を果たし、互いを補完しあっていることに気づく。
そして、その植物の姿と、両方の仕事が互いを補って主従関係がないというパラレルキャリアの姿が重なって見える。

職場で、諒は、後輩の吉高さんが請求書を改ざんしたことに気づき、注意した。すると、吉高さんは逆キレし、パワハラだと社長に訴える。吉高さんが社長の姪っ子であることを、諒は初めて知る。

その日の夜、諒が比奈に会うと、諒の暗い気持ちとは裏腹に、比奈がネットショップで売上目標を達成したことを告げる。苛立っていた諒は、比奈と喧嘩をしてしまう。

喧嘩が原因で週末のデートがなくなったので、諒は、『キャット・ナウ・ブックス』というIT会社員をしながら本屋を経営している人のお店に行き、店主の安原さんに会う。司書の小町さんがお勧めしていたお店だ。諒は、実際にパラレルキャリアを実践している安原さんに会い、背中を押されたような気持になる。

諒は、喧嘩の仲直りのため比奈に会いに行き、比奈にアンティーク雑貨屋をやるための青写真を説明する。比奈は、それなら一刻も早く結婚しようと言う。諒は、2人で助け合って、前に進んでいこうと思う。

感想

主人公・諒さんの「会社を続けながら、アンティークショップを開く」というのは面白い選択だなと思った。

どちらか選ばなければいけないと考えると、金銭的にも心理的にも追いつめられる部分でてくる。

お店の売り上げがすぐに上がるとは限らない。

好きなお店を始めたのはいいけど、日日の生活のお金が捻出できなくて、お金の心配ばかりするようになったら、それはそれで幸せな生活ではない。

安定した収入というのも、大事な人生の基盤だ。

会社員で安定した収入を得て、アンティークショップで精神的な充足を得るというのは、いい案だなと思った。

仕事で収入を得て、趣味で精神的な充足を得るのと似ているなとも思った。

一昔前の仕事人間というのは、自分が情熱を注ぐ事柄(すなわち仕事)と自分がお金を稼ぐ事柄が一致していた。
でも、必ずしも一致していなくてもいいのだと思う。

『第三章 夏美』の登場人物

本の付録:地球の羊毛フェルト
借りた本:月のとびら


 

夏美 万有社の元・雑誌編集者。女性誌ミラで働いていた。
出産後、資料部へ異動。
修二 夏美の夫
双葉 夏美の娘。二歳。イヤイヤ期。
彼方みづえ 夏美の好きな大御所作家
木澤 現在のミラの副編集長
マユ先生 双葉の保育園の新米先生
桐山 チェーンメガネ店ZAZの店員
夏美の仕事上の知人
夏美がミラで働いていた頃、桐山さんの編集プロダクションに仕事を依頼していた
岸川 メイプル書房 児童書編集部 編集長
森永のぞみ 図書館の司書の見習い
小町さゆり 図書館の司書
羊毛フェルトが趣味

『第四章 浩弥』の登場人物

本の付録:飛行機の羊毛フェルト
借りた本:進化の記録 ダーウィンたちの見た世界


浩弥 30歳ニート
デザイン学校卒業後に教材の営業販売をやるも退職
浩弥の母親 旦那とは離婚
お気に入りのパン屋でパート
浩弥と二人暮らし
浩弥の兄 浩弥の兄
授業料免除の特待生で大学を卒業した後、商社勤め。ドイツ赴任中。
征太郎 浩弥の高校時代の友達
小説家希望、水道局勤務
室井 コミュニティセンターの事務員
森永のぞみ 図書館の司書の見習い
小町さゆり 図書館の司書
羊毛フェルトが趣味

『第五章 正雄』の登場人物

本の付録:カニの羊毛フェルト
借りた本:げんげと蛙


権野 正雄 定年退職した65歳
もともとはハニードームの呉宮堂に勤めていた
権野 依子 正雄の妻
パソコン教室の先生
矢北先生 囲碁教室の先生。75歳。
熟年離婚した。
千恵 正雄の娘。27歳 独身
駅ビルの書店勤務
海老川 マンションの管理人
朋香 総合スーパー・エデンの販売員
依子のパソコン教室の生徒
森永のぞみ 図書館の司書の見習い
小町さゆり 図書館の司書
羊毛フェルトが趣味

『お探し物は図書室まで』(青山美智子)の口コミや感想